GPLに違反するとどうなるのか?
GPLに違反するとどのような事が起こるのかStockfishというGPLライセンスが適用されたチェスエンジンを参考に見ていきます。
ライセンス違反は訴訟まで発展する場合は少なく、最悪レベルの問題に発展したケースのひとつになります。
- ソフトウェアライセンスのひとつ
- the GNU General Public Licenseの略
- 改訂されいくつかのバージョンが存在する(このケースではv3)
- 利用は自己責任
- 著作権表記の削除は禁止
- 複製・改変・再配布などは自由
- しかし変更したソフトウェアもGPLとする必要がある
Stockfishとは
チェスエンジンと呼ばれる、人間の代わりにチェスの手を考えるソフトウェアです。
特徴
ソースコードはGitHub上にホストされており、誰でも自由にアクセスすることが可能です。
ChessBaseに対する訴訟
Stockfish の声明によると、Fat Fritz 2 は Stockfishの派生であるにも関わらず、ChessBaseはソフトウェアのユーザが自分の権利を知らされることを保証するGPLライセンスの義務に繰り返し違反していると主張しています。
ChessBase repeatedly violated central obligations of the GPL, which ensures that the user of the software is informed of their rights. These rights are explicit in the license and include access to the corresponding sources, and the right to reproduce, modify and distribute GPLed programs royalty-free.
Our lawsuit against ChessBase - Stockfish
これらのGPL違反に対して主要開発者はChessBaseとのGPLライセンス契約を永久に停止しました。(後述)
Fat Fritz 2
Fat Fritz は ChessBaseが発売したチェスソフトウェアです。
しかしこのソフトウェアは、 Stockfish から実質的にほぼ変更されておらず、独自と呼べるものはニューラルネットワークの重み付けデータに留まっています。
またChessBaseはこれらを根拠にオリジナリティがあると主張しています。
- エンジンの名称(engine name)
- 製作者リスト(authors list)
- いくつかのパラメーター(few parameters)
- 独自に開発したと思われるニューラルネットワーク評価(NNUE net weights)
Indeed, we feel that customers buying Fat Fritz 2 get very little added value for money.
https://kotamorosihtia.com
これらの変更によってFat Fritz 2 は Stockfish 12 と比較すると若干良い結果が得られたとされ、ChessBaseのサイトには成績が掲載されています。
しかしStockfish側は「Fat Fritz 2を購入した顧客が得られる付加価値はほとんどないと感じています。」と主張しています。
GPLライセンス停止へ
Due to Chessbase’s repeated license violations, leading developers of Stockfish have terminated their GPL license with ChessBase permanently.
Our lawsuit against ChessBase - Stockfish
度重なるChessBaseのライセンス違反に対して、Stockfishの主要開発者はGPLライセンス契約を永久に終了しました。
これらの動きかけにより、Fat Fritz 2 DVDのリコールが行われたため、そのまま販売が停止もしくはライセンスを見直す形になるかと思われましたが、ChessBase側は完全にライセンスを無視する形で販売を継続しています。
これはソフトウェアをライセンス販売している会社としては異常ともいえる行為になりますが、ライセンスを破ったとしても即時に販売を停止させる手段を取れない事を意味しています。
販売は継続している
ChessBase 側はこのGPLライセンス終了を無視し、記事執筆時点でもFat Fritz 2 は €99.90(13,000円)での販売が継続されています。
そこで、Stockfish側はライセンス終了を強制するために訴訟を起こしました。
結論はまだ
訴訟はまだ始まったばかりのため結論は出ていませんが、訴訟にはお金と時間がかかるため、ほとんどのケースでは野放し状態となっています。
しかし、このケースのように予算とコミュニティのサポートがある場合は、真っ向勝負できるためどのような結果となるか見守る必要がありそうです。
まとめ
ここまで敵対してしまった状況も珍しいため、訴訟の結果が気になります。
関連記事:AIによるコード提案にもリスク
GitHubのCopilotはAIによりコードの提案を行いますが、GPL違反となるリスクがあります。
References
- Our lawsuit against ChessBase https://stockfishchess.org/blog/2021/our-lawsuit-against-chessbase/
- Statement on Fat Fritz 2https://stockfishchess.org/blog/2021/statement-on-fat-fritz-2/