Rasbeprry Pi OS レガシー版

Raspberry Pi の標準OSに新しい選択肢が登場しました。用途によりどちらを選択するべきか変わるのでざっくり説明します。

Rasbeprry Pi OS レガシー版

ラズベリーパイの標準OSである Raspberry Pi OS はこれまで基本的に最新版のみがメンテナンスされるようになっていましたが、突如レガシー版が登場しました。

Raspberry Pi OS
Raspberry Pi OS は基本的にDebianというLinuxディストリビューションを元にして構成されています。
  • 最新版:Debian 11 (Bullseye)ベースのもの
  • レガシー版:Debian 10 (Buster)ベースのもの
(2021/12/19現在)

どちらのOSを選択するべきか迷う所だと思いますので、ざっくり解説していきます。

“New” old functionality with Raspberry Pi OS (Legacy) - Raspberry Pi
We are releasing a ‘legacy’ version of the Raspberry Pi OS based on Debian Buster, to provide a continuity option for users who require it.

レガシー版を使うべき状況まとめ

これまで使っていたアプリを使いたい場合
もちろん最新版でも動作する場合があるので、最初からレガシー版で試すよりは最新版で動作しなかった場合にレガシーを試す方が良いです。
カメラを利用する場合
基本的にほぼ全てのアプリが記事公開時点では古いカメラスタックを利用しています。そのためカメラ利用する事がわかっている場合はレガシー版がオススメです。
チュートリアル等を試す場合
2021年10月以前に公開されているものは基本的に古いOSを前提としています。そのため新しいOSではそのまま動作しない可能性があります。

では以下で詳細を見ていきます。

レガシー版を使うべきユーザー

ラズベリーパイは教育目的でも利用されることが多くあり、非常に安定したソフトウェアスタック(OS)を採用してきました。

しかしながら今回の Bullseyeベースのアップデートでは特にカメラ周りで大きく変更が行われた結果かなりのユーザーが影響を受けました。

これまで動作していたものをそのまま利用したい

これまで動作していたアプリやPythonのコード等が最新版では動作しない可能性があります。これは実行環境の変化で、ソフトウェアのバージョンや構成等が大きく変わった場合に、本来プログラムもそれに追従して更新する必要があります。

しかしオープンソースソフトウェアは個人で開発が行われているものもあり、対応完了まで数ヶ月以上掛かる事もザラにありますので、気長に待ちましょう。

オープンソースソフトウェア

オープンソースソフトウェアは基本的に”そのまま”の状態でリリースされている場合が多く、新しくリリースされたOS等では動作しない事もよくあります。
不便だという気持ちは理解出来ますが、開発者に対して文句を言うのは大きな間違いです。なぜなら開発者はあくまでも善意で提供しており、基本的に見返りもなく自分の時間を割いて開発を行っています。「使えなくなったから動くようにしろ!」というのはとても失礼な発言なので控えましょう。

チュートリアル等を試す

例えば以下の動画は仕組みはカメラスタックと呼ばれるカメラ周りのソフトウェアが古いバージョン前提となっているため、最新版では動作しません。

そのため、私の動画に限らず 2021/10/30以前に公開されているものは基本的にレガシー版での動作が前提となっています。

(例)以下の動画ではBuster世代のOSで動作確認を行っています。

ラズベリーパイでカメラを利用する場合

これまで動いていたカメラアプリが全部動かなくなった!!

これまでBusterベースだったRaspberry Pi OS のカメラスタックはデフォルトで無効化されているためほとんどのカメラ関連アプリは動作しない状況になっています。

リリース当初はPythonからカメラに全くアクセスすることが出来ないというなかなか思い切ったリリースでしたが、その後、最新のBullseyeベースのRaspberry Pi OS にBusterベースまでで利用されていたカメラスタックの有効化オプションが用意されました。

sudo raspi-config

しかしこのコマンドでカメラスタックを旧バージョンのものに更新しても残念ながら他のライブラリやソフトウェアのバージョンの違いにより動作しないものもあります。

レガシー版を使うデメリット

レガシー版は基本的に古いソフトウェアで今後はサポートが終了するため、セキュリティパッチの提供等が終了していきます。

また最新版OSにしか対応していないアプリも徐々に増えていくものと思われます。

Chromiumが遅い

ブラウザであるChromiumのハードウェアアクセラレーションは残念ながらメンテナンスに割けるリソースが不足しているため、Bullseye版と比較し速度が遅くなります。

Hardware acceleration of Chromium takes a significant amount of support time; for every release we have to re-port our hardware interfaces. At the same time, it is important that Chromium is supplied with the most recent version available in Debian, since it has many security patches applied to it. For this reason we think using the upstream software-accelerated version by default will be better, although we will still keep the hardware-accelerated v92 browser.

サポート終了は 2024年6月まで

現時点ではベースとしているDebianのサポートが 2024年6月までとなっているため、このレガシー版の利用は最大でもそれまでになる見込みです。

また、レガシー版が採用している Linux Kernel 5.10 もサポート期限は2026年の12月までとなっているのでそれほど遠くない未来に全ユーザーが最新版へ更新する必要があります。

あくまでもレガシー版の利用は一時的なものとして捉えるべきです。

最新版を使うべきユーザー

基本的に上記のようなカメラが利用できない、ソフトウェアが動かない!という事が無い限り全ユーザーが最新版を利用すべきです。

最新版はその名の通り最新OSなので、元となっているDebianに取り込まれた新しい機能やソフトウェアを利用することができます。

またデフォルトで入っているブラウザのChromiumもハードウェアアクセラレーションが有効になっています。つまり単純にレガシー版を使うより早いので最新版の利用がおすすめです。

なぜレガシー版が用意されたのか?

もりしーの個人的な推測です

ここは私の想像で記述しているため、実際にはどのような経緯でレガシー版が用意されたのかは不明です。

しかもリリース当初は古いカメラスタックを利用するオプションが用意されなかったということもあり、これまでの完全に利用することが出来なかったため相当数のユーザーが困ってしまったものと思われます。

レガシー版のインストール方法

Raspberry Pi Imager からレガシー版を選択することが出来るようになっているので、選択するだけです。簡単!

Raspberry Pi OS(Other)
Raspberry Pi OS(Legacy)

あとは書き込むだけ。

これまで作ったチュートリアル動画全部動かねぇ、無情。

記事の内容は間違いが無いように気をつけていますが、私の認識違いや、ミスなどにより間違っている可能性もあります。もし発見された場合はお問い合わせフォームよりご連絡頂けると幸いです。